彼は音楽の話になると妙に目を輝かせ、熱心に語った。

なんだか知らないが、彼のところへパソコンを届けることになった。


『死神≒魔王』


「ここに置いていいかな」
今回の担当は安藤という男だ。
私は彼のデスクにパソコンを下ろす。

安藤は手持ち無沙汰になったのか、私にどこの部署か尋ねてきた。
私は資材管理部の手伝いということになってはいるが、元の部署なんてない。

だから調査の仕事だと言っておいた。嘘じゃない。

相手が何も知らないのをいいことに、少しばかり愚痴ってしまった。
まぁ、アレだけで私を死神だとは思わないだろう。

「そうやって油断してるから、私に気付かれるのよ」

廊下に出たら、どこからか声がした。
あたりには誰もいない。

聞き覚えのある声だった。
どこで?覚えていない。

担当した者の一人だったか。私の知り合いではないはずだ。
私がかつて「可」の判断を下した誰かのだと思う。

だとしたら、幽霊の声か?
「……まさか」
霊なんていない。それは死神の私がよく知っている。

記憶の奥で、初めて見た太陽がフラッシュバックした。
私は思わず目を細める。
誰かが見たら、笑っているのだと思ったかもしれない。


その後、安藤の帰社時刻を見計らって駅に向かう。

そういえば、安藤は妙な術を使えるという情報があった。
彼はそれで何をしたのだろう。何をするのだろう。

それとも、そんな能力があるから今回選ばれたのだろうか。

駅であった安藤とは上司や仕事の話をした。
やっぱり彼は私を普通の人間だと思っているようだ。

時々安藤の言っていることが分からないことがあった。
だが彼も私の言っていることが分からない、というような表情をしていた。

「いやになるよなー、ここんとこずっと」
安藤が空を見上げて言う。天気のことらしい。
「太陽なんて見たことがない」
私は真面目に言ったのだが、安藤は冗談と受け取ったらしく
「本当、最近太陽を見てないな」
と言った。

私のせいだ、と言おうとしたが止めておいた。

七日目。
私は「可」の判断を下した。
後は見届けるだけだ。

彼は今日、犬養とか言う政治家の演説を聴きながら死ぬことになっている。

私が見つけたとき、安藤は人ごみを必死で掻き分けていた。

その目は犬養を必死で見ていた。
まるで一刻も早く犬養に近付かなければならないとでも言うように。

こんな状況を、私は前にも見たことがある。
偉い政治家と、それを恨むテロリストか何かだったか。
しかし安藤は武器も何も持っていない。
どうするつもりなのだろう。

私は、安藤の能力のことを思い出した。

どんな力かは知らないが、彼はそれをあの政治家に使おうとしているのではないか?
だが、安藤は倒れた。
やはり、その力のせいで安藤は選ばれたのかもしれない。

私は安藤を見下ろし、仕事が無事に終わったと安堵した。

そうだ、駅前のミュージックショップにでも行こう。


千葉って名前に一瞬気付かなかったけど、「調査」のくだりで 「千葉さんだぁぁー!!」 ってなった。誰が死ぬかと思ったら! 関係ないけどアンダーソン好きだ